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夢縛るテスト期間
・午前8時40分、朝のホームルーム。
「千莉、号令をかけてくれ。」
そう言ったのは大助のクラスの担任である土師圭吾だ。
「はい」
そう言って号令をかけたのは土師千莉……つまり土師圭吾の妹だ。
大助のクラスの日直は毎日のように千莉がする。朝、千莉の声を聞いてスタートし千莉の声を聞いて終わる、究極のシスコンである土師圭吾が提案したのだ。
「千莉、ありがとう。じゃあホームルームを始める前に出席を取る、土師千莉!」
圭吾に呼ばれ慌てて返事する。
「よし、全員いるな?」
出席を取ると言いながら千莉しか呼ばない事はクラスの全員が知っていて軽く流す。
「えー皆にお知らせする事がある。実は昨日からテスト期間だ。」
土師が悪戯っぽく笑う。
「えぇぇぇぇえぇ!?」
クラス中がビックリした。「昨日から?聞いてないぞ!」
クラス中からブーイングを浴びる土師だが、さらに追い討ちをかける。
「ちなみに数学のテストを作るのは僕だ、頑張ってくれよ」
土師がさらに笑み深める、クラス全員が固まった。
「…先生」
そう言って手を上げたのは利菜だ。
「先生が……テストを作るのは…ホントですか?」
利菜が青ざめて聞く。「ん?そう言ったけど聞こえなかったかぁ~い?それに“君は”大丈夫じゃないか」
土師が笑みを残したまま答える、しかし利菜の心配は自分の事じゃなく……詩歌である。
「質問はないね?これでホームルームを終わる、テスト頑張ってくれよ?」
笑いながら教室を去る土師を見届けた後、皆が輪になる。
「どーすんのよ!?先生のテストはかなり難しいって言われてるのに!」
亜梨子が慌てながら言った、皆に焦りが現れる。
「しかも一日遅れて勉強だよん?まずいよ~ん。」
初季まで慌てだす。
「やっぱり勉強会を今日からしないと…」
珍しく大助が慌てる中、一番の問題、詩歌は微笑んだ。
「先生の問題って変わってて面白いよね~」
皆が呆然となる、その詩歌を見て皆の気持ちが一つになった。
「今日、大助の家に緊急集合よ」
全員がうなずいた、詩歌1人だけが事の重大さに気付いていなかった……
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