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「ちょ、ちょっと待てって!私達は何もしてねーよ」
「なら何をしに、ここにいるのだ~」
茶深の最後の足掻きも虚しく遮断される。
どうやら逃がす気“0”のようだ。
「君達では僕に勝てないよ~、さぁ、覚悟したまえ」
そう言っていた戌子が消えた、……否、目にも止まらぬ速さで動いていたのだ。
破壊音が聞こえた、戌子が振り下ろしたホッケースティックが茶深の肩スレスレを通り教室の床にヒビを作っていたのだ。
「僕は加減を知らなくてね~、腕一つや二つは無くなっても勘弁してくれ~」
愉快そうに笑いながら戌子がホッケースティックを構える。茶深は一瞬の出来事に驚き思考が停止していた。
「…………君、不合格」
残念そうに呟き戌子はホッケースティックを降り下ろした。
「待て、ワンコ!」
ピタリッと戌子のホッケースティックが停止する。振り返った場所には平凡な顔立ちの少年、薬屋大助が立っていた。
「なんだ~君か~、何のようだね?」
戌子がホッケースティックを肩に担ぎながら聞く
「そいつ等は俺達の手伝いをしてくれただけだ……悪いのは俺だ、そいつ達は見逃せ」
大助が真剣な表情で言う
「なるほど~彼女の仲間は君だったのかー………何でボクの場所がわかったのだ?」
戌子が目を細めて大助を睨む、どうやら大助に止められた事に怒っているようだ。
「下は俺のクラスだ、いきなり天井にヒビができたら誰でも気付くだろ?それにお前が放つ“磁場”を千莉が感知したんだよ。そんな事より何でお前はテストを受けないんだ?」
淡々と言う大助だが戌子の表情が固まっている。
「ボクが何でテストを受けないかって?……それは……………風紀委員の仕事だよ~」
「嘘を吐くな、テストの時は風紀委員でもテストを受けるのが義務だ、それなのに何で外にいたんだ?」
「それは………き、気分転換なのだ~」
何とかその場をはぐらかそうとする戌子を見て茶深がニヤリと笑った。
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