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「バケモノのくせに希未ちゃんに手だそうとするなんて生意気だ!」
「希未ちゃんはなぁ…村で一番かわいいんだぞ!」
「お前なんかに喰われてたまるか!」
どうやら、この道の先には少年たちのアイドル的存在の“希未ちゃん”っていう子の家があるらしい。
だが、ぼくはその希未ちゃん…ましてや家など知っているわけがない。
明らかに誤解だが、少年たちはバケモノに聞く耳なんて持ってないだろうし、なにより言い訳にしか聞こえないだろう。
(どうしよう…痛いのは嫌だなぁ)
思わず、顔をしかめたが目の前の少年たちは悪口に夢中で気づく様子はなかった。
嫌だけど殴るなら、さっさと殴ってほしい。
じゃないと日が暮れるし、出歩いてるのがバレたら父上にお叱りをうける。
父上は、あの日以来過保護になった。
半狂乱になった母上を見て辛かったのだろう。
恐れるように、ぼくを家から出してはくれなくなった。
本家でも村でも目立ち忌み嫌われ父上ですら見捨て始めている。
(散歩に出るんじゃなかった…)
今更、後悔しても遅いのだった。
小さく、ため息がこぼれた。
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