実利劑

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>「そ、それは」 「毎日、残業もしないで定時になるとさっさと帰ってきて。そして家でやってることっていったらこんな下らない遊び。あなた、昇級試験受けなかったそうね。この間、部長の奥様と街でばったり会って聞いたのよ。がんばれば主任になれるチャンスだったのに、って」 「どうしても主任になりたいって奴が他にいたんだ。友達とあさましい争いはしたくなかった」 >「あなたは甘いのよ。私だって結婚するまでは働いていたからよくわかっているわ。会社っていうのはね、仕事がなくても忙しいふりをして残業して、上役にはおべっかを使って、そして同僚の手柄を自分のものにしてしまう、そういう人に限ってどんどん出世して、お金持ちになっていくものなのよ」 「なあ君には不自由させていないだろう。人をけ落としたりしなくても、幸せに生きていければそれでいいじゃないか」 「そんなお人好しのところがあなたの欠点だわ。だから、これを買ってきたのよ」
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