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…あの日、俺はいつものように行きつけのバーで酒を飲み、そしていつもの様に飲み過ぎて酔っ払っていた。…ただ普段と違っていたことが一つだけ。常連客以外滅多に出入りしないこのバーに初めて見る顔が飲んでいたこと。そしてそいつは人間とは思えないほど美しく、妖しげだったということだけが…
酒を飲むと人間、感覚が狂うもんだ。普段の俺なら危険を察知し近づかなかっただろう…。だが酒の勢いもあり、迂闊にもそいつが気になり話し掛けてしまった。
何処から来たの?初めて見る顔だよね?
…一切返答がない。
あれ?聞こえなかったのかな?何処から来たの?ねえ…。
しつこい位に何度も話し掛けたが相手にもされず、そいつは表情一つ変えない。俺はさすがに憤りを覚え、よせばいいのにからかい半分でそいつの身に付けていた十字架のネックレスを手に引ったくった。
ん…逆さ十字?
…その時初めてそいつと目が合った…紅に妖しく輝く瞳…。その瞳と目が合った瞬間、俺は心臓が止まりそうな程の恐怖と違和感に襲われた…。
…身体が熱い!そしてようやく気付く…俺の身体から血が吹き出し、雪の様に店の中に降り注いでいたことに…。
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