カツラ屋本舗

親父の手紙

家族も知らない親父の秘密を知っていた。
俺は、ずっと知らないフリをしてきた。

あの厳格な親父がカツラを被っているなんて口が滑ってでも言えなかった。

見てしまったんだ。
親父が帽子を取る時カツラが落ちた瞬間…。

葬式もカツラ着用のまま行われお母さんや妹にバレずに済んだ。

きっと入院中に医者かなんかに伝えておいたのだろう。

親父は、自分がすぐ死ぬのを悟っていた。
家族一人一人に手紙を残しているのだから。