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「…よな。やっぱ……。」
やはりよく聞こえない。
気付かれないようにドアを少しだけ開く。
「やっぱ今のおまえの姉ちゃんだろ!?」
「だったらなんだよ。」
友達の楽しそうな声とは裏腹に彷徨の不機嫌そうな声が聞こえる。
「なぁなぁ、彼氏とかいんの?めっちゃタイプなんだけど!」
(え……。)
いきなり言われても困る。
「知らねぇよ!」
彷徨は半ばキレ気味でこちらにやってくる。
(やばっ!)
慌てて自室へと逃げる。
間一髪のところでなんとか間に合った。
ドタドタと階段を降りていく音が聞こえる。
(なんであんなに怒ってたんだろ。)
訳もわからず、とりあえず制服を脱ぎスウェットに着替えた。
「おじゃましましたー。」
あれから約1時間後。どうやら彷徨の友達が帰っていったようだ。
(よし…。)
意を決して彷徨に謝ろうと部屋を出る。
『あ…。』
ちょうど部屋に戻ろうとしていた彷徨とばったり会い声が重なる。
「えと、さっきはごめん。友達来てるって気付かなくて…。だから…」
「別に。」
まだ言いおわらない内に素っ気ない返事をしたかと思えばドアの閉まる音がした。
「あ…。」
何だか味気なかった。
(やっぱ怒ってんのかな…。)
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