第1章 夢から覚めた現実

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(あれ…?) ここで一つの疑問が浮かんだ。 うざいから素っ気ない態度をとっていたのではないのなら、なぜいきなり素っ気なくなってしまったのか…。 「じゃあ、彷徨はなんでいきなり冷たくなっちゃったの?」 特に考えもせずに思ったことを口にした。 「っそれは…。」 なぜかそこで口ごもり俯いてしまった。 「彷徨?」 具合でも悪いのかと思い、額に手を当てようとした。 パシッ その手を彷徨に取られる。 「え…?」 一瞬何が起こったのか理解できなかった。 何かが唇に触れたかと思いきや、目の前には彷徨の顔。数秒後、ゆっくりと離れていく。 「か、なた?」 やっと状況を呑み込み慌てて口元を手で覆う。 ぐいっ そのまま胸に引き寄せられ抱き締められる。 「ちょ!彷徨?」 もがいて離れようとするが、男の子の力に叶うわけもなく… 余計に腕に力が込められた。 「好きだ…。」 小さな、小さな彷徨の声が耳に入った。 「待って…私たち、姉弟だよね?」 心拍数は高いくせに、なぜか頭は冷静だった。
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