12月17日

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しばらく廊下で待っていると、静かに病室のドアが開いた。 「お待たせ」 「…ああ」 見慣れているはずだったが、改めて見る涼子の顔は美しかった。 「まぁ、こんなもんでしょ。あまり化粧品持ってこなかったから」 「…うん」 「入らないの?」 「あっ!入るよ」 変な話、見とれてしまった。涼子の顔なんか、ほとんど毎日見ているのに今日は全然違う気持ちで見れた。 それから俺たちは、写真を撮りまくった。 涼子の思い出を少しでも多く残そうと、シャッターを切りまくった。一緒に並んで撮ったり、涼子一人の写真を撮ったり、楽しいだけの時間だった。 急に涼子が、真剣な表情で俺を見つめて言った。 「大ちゃん…子供作れなくてごめんね」 「…えっ?なんだよ急に」 「ずっと考えてたの。子供欲しかったなぁって」 「そうだったのか。でもそれは涼子だけのせいじゃないし、仕方がないことだよ」 「うん、ありがと。私のことは気にしなくていいから、私が死んだら再婚とかしてね」 「今は、そんなこと言わなくていいよ。そんなこと考えられないよ」 「だろうけど、今しか言えないから」 「…うん」 「絶対、幸せになってね」 「…お前がいないと幸せになんかなれないよ」 涙を浮かべながら言った。 「嬉しいけど、それじゃ駄目なの。私は、見守ることしかできないから」 「……」 「私は、大ちゃんが幸せならそれが一番だから。ずっと笑顔でいてね。約束よ」 「…うん、わかった。約束するよ」 涼子は、俺からカメラを取り上げると急にシャッターを切った。 「撮っちゃった。ヘヘ」 「…こら、消せよ」 「だめぇ。保存っと」 「ダメだって。誰にも見せられないじゃん」 「見せなきゃいいじゃん。でも、あとでこの写真見たら、約束のこと思い出してね」 「……うん」 俺は涼子の手を握り、その写真を見つめた。
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