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フィアナと名乗った女性は、二人と同じで兄以外家族はいないらしい。
リンはある程度埃の払われた部屋の椅子に腰掛けながら、シャンは少し離れて壁にもたれながら話をしていた。
「……つまりお二人は移動中に私を助けて下さったんですね」
「はい、シャンが人の声を聞いてついていったら不思議な世界に入ってしまったんです」
若干事実を歪めつつ、実に自然な態度で会話を進めるリンを見て思わず苦笑する。
面の皮が厚いとはこの事か。
「なんかシャン失礼なこと考えなかった?」
「いや、何も?」
「ならよし
そういえば、なんでフィアナさんはあんなところにいたんですか?」
話の流れを変えるようなリンの問いの後、沈黙が降りる。
「……兄を」
ギュッと毛布を握りながら、フィアナが口を開く。
「兄を探しに行ったんです。少し前からしょっちゅう森に行って朝まで帰ってこないことが多くて……
今回は思い切って迎えに行こうとしたんです」
寂しげに俯いてしまう。
たった一人の兄。唯一の家族。
心配するのは当然だ。
むしろシャンには兄の気持ちが理解できず、眉根を寄せた。
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