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「埃っぽい」
通された部屋に入ったリンの第一声。
純度の低い硝子から入り込む街灯の光は歪み、遠い世界の景色のように思えてくる。
その光の帯に沿って埃が星のように輝く。
これもこれでいい気がするが、
「流石に体に悪いか」
「だね」
リンは軋む窓を最大まで開けると、聖句の腕輪を構える。
そのまま腕を振るい風を起こし、積もりに積もった埃を外に押し出した。
「掃除完了っと」
「ズボラだな」
「夜に騒ぐのも失礼でしょ」
リンはサラッと受け流すと、ようやく部屋のランプに灯りを灯した。
安い油なのか薄暗い。
シャンは背負っていた女性をベッドに下ろし、壁にもたれる。
部屋にあるのは山積みなった本ぐらいで、他には必要最低限のものしかない。
「……用もないし帰るか?」
「一応家族もいるみたいだしね」
明らかに女性の物でははない衣服を見ながら呟く。
今日は無駄足だった。
そんなことを考えながらシャンは壁から背中を離すと、扉の取っ手に手をかけた。
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