第六章~小さき賢者の考えること~

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 リンもその後に続く。  二人が部屋を出ようとしたとき、 「ん…?」 「あれ?」  同時に足が止まった。  リンは落ちていた丸められた羊皮紙に、シャンは僅かに身じろぎした女性に視線がいく。 「……っ、ここは……?」 「あなたの自宅ですよ。森で倒れてたので連れてきたんです」  ランプの光に一瞬目を閉じる女性に、リンは紙を拾ってから声を掛ける。  女性はしばらくぼんやりとしていたが、状況が飲み込めたのか慌てて立ち上がる。 「ご、ご迷惑おかけしてすみませんっ」 「お気にならさず。背負って来たのはシャンですし」 「『気にしなくて良い』理由になってねーよ」  社交的な笑みを浮かべるリンにすかさずツッコミを入れた。  初対面だろうが何だろうが冗談をかますのは無差別らしい。  もしくは、冗談とすら思っていないのかもしれない。  二人が無言の火花を散らしている中、クスクスと女性らしい笑いが聞こえてくる。 「クス……お二人とも仲がよろしいんですね」 「どこがだ?」 「どこがでしょうか?」  返事は二人同時だった。
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