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水滴の浮いたグラスがサイドテーブルに置かれる。
注がれていた冷水は半分に減り、激しく波立ってもこぼれぬまま落ち着いた。
「重ね重ねありがとうございます……」
「いえ、お気になさらず」
深々と頭を下げられ、リンは少し慌てた様子で手を振りながら返事をする。
普段頭を下げられることがないためか対応が若干不恰好である。
「けど……」
「事実私は水持ってきただけですよ。礼ならシャンに」
「気にしなくてよし」
頭下げられる前に先手を打つ。
慣れていないのはシャンも同じなのだ。
フィアナは羨ましいそうに二人を見つめ、そして窓へと視線を移す。
零れる光の量は徐々に減り、夜が更けていく様を映す。
「昔はもっと元気だったんですけどね……」
ポツリと独り言のように薄く開いた口から言葉が漏れる。
「兄について森にだって行けたのに……親が亡くなって急に悪くなって、近頃は外出すらままならなくて……」
表情を曇らせながら再び俯いてしまう。
「……長々とくだらない話をしてすみません。夜も遅いですし」
「はい、そろそろ失礼させて貰います」
リンはゆっくりと立ち上がり、退室した。
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