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新しいクラスでは同じ中学だった奴が一人もいなかったからほんのちょっと心細い気持ちだ。
本当は名簿順に並んで、体育館に向かっていたはずなんだけど、このままだと一番後ろに並ぶ事になりそうだ。
僕は担任が先頭に立っている列の一番後ろに並ぼうとして、例の『後ろ姿美人』が僕の前に並んでいるのに気が付いた。
同じクラスだったんだ。
ちょっとラッキーなんて思いながら、前から見たら同じクラスだった事を呪うかも、なんて思ってみたりもした。
どんな顔をしてるんだろう?
ほんのちょっとだけ興味がある。
なんて事を取りとめもなく考えているうちに退屈な入学式は終わり、校長や来賓の激励の言葉を頂いて、さあ、教室に戻るぞってことになった。
彼女は何事もなかったように振り返る。
イヤイヤ、僕の方を振り返ったわけじゃなくて、正確には体育館の出口を目指して振り返ったんだろうけど、そんな事は僕にとってどうでもいいことだった。
後ろ姿以上に前から見た彼女は美人だった。
美人というには幼い感じがするから「きれいな子」っていう言葉が一番ぴったりくるかもしれない。
そこには僕の理想をそのまま形にしたような女の子が立っていた。
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