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今日何度目か分からない、聞き取れないような小さな声で楓ちゃんが言ったのは、そんな事だった。
「うん、勿論だよ」
僕が笑って応えると、楓ちゃんは赤い顔を俯かせた。
「じゃあ、今日はこれで」
「はい。ありがとうございました」
「それはこっちのセリフだよ」
こうして、僕は先にお辞儀して裏通りを出て行く楓ちゃんに、姿が見えなくなるまで手を振って、彼女と別れた。
そして
「ハァァーーーー」
盛大にうなだれた。
「やばい、カッコつけ過ぎた~~」
一人、僕は誰もいない所で叫ぶ。
ちなみにカッコつけ過ぎたと言うのは楓ちゃんにネックレスを買って上げた事だ。
何故かというと、元々今日の予算は1万5千円だったのだが、結局、1万+1万で2万ものお金を使ってしまった。
つまり、予算オーバーで予備のお金も使った今の僕は、持ち金がすっからかんなのだ。
まぁだからどうって事は無いんだけど……ただ一つ、問題がある。
「帰りの電車賃……どうしようかな…」
……冬の風はただ寒く、虚しく僕の身体突き抜けて行く。
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