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『錬心館』と書かれた古びた看板。
中を覗きこむと練習生数人と指導者とみられるものが稽古をしていた。
昨夜のあの少年もいる。
俺は道場の隅にドッカとあぐらをかき様子をみることにした。
稽古風景は想像していたものと異なり、なんとも和んだ雰囲気で行われている。
第一印象…「うさんくせぇ」
黙って見ていると指導者らしき人物と目が合う。男はスタスタと近寄ると
「もう少し近くで見ていってもいいんだよ」
物腰柔らかい台詞に俺は面食らってしまった。
昨夜の少年も俺に気付いたが、気にせず稽古を続けている。
昨夜の出来事と稽古風景のギャップに俺は半信半疑になった。
指導者の言葉に
「いや、ここでいい」
と俺はぶっきらぼうに答えた。
そんな言葉に、指導者は微笑みで返すとまた稽古に戻っていく。
指導者は何やら皆に声をかけると全員を並ばせ、その中の一人と対峙して構える。
指導者につかみ掛かる練習生が何度も投げ飛ばされている。その光景を見て昨夜の出来事とのダブりを覚えた。
が、俺はまだ信じれない。無言で近寄っていき指導者に言い放った。
「俺が相手でもいいか」
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