武心【ぶしん】

序

一瞬の静寂に辺りが包まれた。

静寂を破り俺の相手の拳が降り懸かってくる。

そこからはもう本能と経験の勝負。

俺はボクシングスタイルで相手の右ストレートを左にかわし、相手のみぞおちへボディブロウ。

相手がひるんだのを無意識に感じ取り、すかさず路地の壁に押し付け膝蹴りを続けて腹部に叩き込んだ。

｢グッ…！｣

腹を押さえながら相手が横たわり呻き声をあげている。

相手が動けないのを確認し、二人を相手にしているコウタの方に目をやる。

｢バスッ！｣

ちょうど相手の側頭部にコウタのハイキックが決まっているのが見えた。

コウタを相手にした二人も路地に横たわり気を失っている。

｢フゥ…｣

一息ついて俺とコウタは路地裏を出た。