『だっこ』

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それは残業したある日のことでした。 僕は東京と神奈川をつなぐ黄色っぽい電車に約一時間ほど乗って帰宅しているわけなんですが。 仕事が9時に終わるとして家に着くのは10時をまわってしまうわけです。 そうなるとまぁ姫の機嫌は悪くなりますよね…。 「あ、も、もしもし?俺だけど。」 おそるおそる気遣いながら喋る僕。 その時、息子の泣き声が電話越しに聞こえたわけですよ。 「よちよち。パパ帰ってくるの遅いでちゅね~」 姫は息子をあやします。僕は申し訳なさそうに「ごめんね、もう帰るから」と言います。 『まったくパパは息子をだっこしないでどこの女をだっこしてたんでしゅかね~』 ………。あぁ。はい………。
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