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穴の中は薄暗い。暗闇の向こうにうごめくなにかがいるような気がする。
・・・目が慣れてきた。
コンクリートの壁。鉄の扉。
奥で二つに分かれている。
まっすぐ進むと行き止まりだった・・・が懐中電灯を発見した。
まだつかえるな、とつけて振り返った時だった。
二つに分かれた道の曲がり角に何かいた。
確かに生き物の動きだった。
不安と希望。好奇心のままに追ってみた。
そこには、人ならぬものがいた。
なんだ。あれは。
灰白色の肌は硬化してまるで鱗のように光沢を放ち、顔はなく、血にまみれた胸部には穴があいている。
それは穴から緑のべっとりしたものを垂らしながら近寄ってきた。
腰を曲げ、手を地面にこすりながら、踊るように近づいてくる。
そして、肩に衝撃が走った。
堅く長い両腕で殴られたのだ。
車にでもぶつかったかのような衝撃。
殺される。
そう思うと同時に、錆びた金属バットを折れるまでそれにたたきつけた。
動かなくなってもたたいた。
たたいた
たたいた
たたいた
ぎちゃっとか、めきっとか小気味のいい音が鳴る
たたいた
たたいた
バットが折れて、ようやく自らを抑制できた。
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