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「…どうしたの?」
手を握られてぼーっとしていた俺は、杏子さんの声でハッと気がついた。
「い、いや、何でもないよ。」
明らかに動揺している俺の目に杏子さんの整った綺麗な顔が映る。
「顔が真っ赤よ?」
両方手で火照った顔を杏子さんの冷たい手が冷やしていく…。
んな訳ねーだろ!?
止めてくれ!
拷問か!?
拷問なんだな!?
不意に杏子さんの唇が俺のそれに近づく。
おぃおぃおぃおぃ!?
まさか…。
俺の唇と杏子さんの唇とが重なる…
…その直前で止まり、変わりにおでことおでこがチューしていた。
「…熱は、無いみたい。」
どっと全身に大きな波が押し寄せて、俺の心臓が暴れ回っている。
「今日は、早く寝なさい。明日は、大変なんだから。」
そう言って眩しいくらいの笑顔を俺に向けた。
「うん…。そうするよ…、お休み。」
暴れん坊の心臓を右手でぎゅっと押さえながらキッチンを後にした。
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