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そうこうしている内に開会式が終わり、次々にプログラムを消費して行った。
「次は、いよいよ…」
「来夢ちゃんが走るね。」
杏子さんは、手を前で組んで祈るような姿でグランドを見ている。
「お!文太と来夢ちゃんは、一緒に走るんか!?こらぁ、見ものやなぁ。」
事情を知らないリュウさんは、缶ビールを片手にプログラムを見ながらニヤニヤと笑っている。
年長組の駆けっこは、三十メートルの短い距離を競う短距離走だが、五歳の園児が走るには、中々遠い距離である。
「何か…緊張するな。」
「別にあたし達が走るわけじゃないじゃん。あ、お茶貰うよ。」
林檎は、強張った顔をしていて、美甘も発言の割には、声が震えている。
「美甘……。」
「何だよ?そんな緊張するなよ。」
「それ、天つゆだぞ?」
「ぶほぉ!!」
涙目になりながら咳き込む美甘。
お前だって緊張してんじゃん。
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