Vacation or Hell.

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 ここは県内でもトップクラスの進学校、県立双葉高校である。 学期末試験も先週終わり、生徒達は明日から始まる夏休みへの期待と手渡される通信簿への不安が入り交じった複雑な想いを抱いていた。 そして今まさに、生徒達の悩みの種が返却されている真最中だった。 一人一人出席番号順に名前を呼ばれている。 『吉河孝二ー!ズバリ成績予想は?』 『せ、成績予想?』 前に座っている女子生徒、横田亜紗子が後ろを振り返り、ごくごく平凡な男子生徒の吉河孝二に声を掛けた。 横田は元気で明るく、クラスでもムードメイカーのようになっている。 それに反して吉河は言葉数も少なく、引っ込み思案な性格そのままにクラスでも目立たない存在である。 対象的なこの二人。実はこの学校の生徒会役員なのである。 『んーと……体育と数学以外に2以下は無いって所かなぁ?』 『ひゃー。ボク……数学もやばいかも…』 『や、やばいって……?』 『2………取るかも…』 何かを諦めたような乾いた笑顔で呟く横田。 顔面蒼白で、半分魂が抜けているのではないかとさえ思わせる。 『よ、横田さん!きっとだ、大丈夫だよ!』 『へ…へへへ……私の夏休み…』 『横田さん!帰って来てよ!』 『は……ははは…』 ……さて。なぜ二人が成績の【2】にこだわっているかと言うと、それは一昨日の生徒会会議に原因があった。
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