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悪夢の起こる日の朝、俺たちはいつもどおり、のんびりと授業を聞いていた。
3年の2学期といえば、世間では一番忙しい時期だと言われているけど、俺たち就職組みには関係のない話だった。
だから授業風景もいたって平和で、漫画を読んでる奴も、MDを聞きながら雑誌を読んでる奴もいた。
ここにいるだれもが、放課後の学校でまさかあんな目にあうとは、思っていなかっただろう。
かくゆう俺も、その一人だった。
となりの席の徹とTVの話、新しいゲームの進み具合だとか、どこそこに隠しアイテムがあったとか、そんなのんきな話をしていた。
担任の青野が、俺たちに放課後残れと言い渡したのは、6時間目が終わったHRの時だった。
「今ごろ言うなよ~」
「もう予定はいってまーす」
「バイトがあるんですけどー」
うそかホントかわからないことをみんな口々に言ってどうにか早く帰れるようにしようと思っている。
そんな俺達に、青野はニッコリ笑いながら通告した。
「あ、サボった奴留年確実だかんな」
そのとたんみんながわめく。
「エ――ッ!横暴!」
「あー聞こえない聞こえない。
なーんにも聞こえない。
さーて、HRはじめるぞーみんな席につけぇ」
みんなまだぶちぶちと文句を言いながら、それでもおとなしく席についた。
「連絡事項は…あー、お前ら。
最近部活がなくなって学校にずっと残ってるらしいなぁ。
ったく、早く帰って宿題でもしてろよ。
学年主任がうるさく言ってたんだぞ。
あーでも、今日は特別な」
『先生ですが、なにか?』なんて顔が似合わない青野は、怒られるのは俺なんだぞーと、全く教師らしくない顔で言った。
俺達3-Fの担任青野は、今年大学を卒業したばかりで、まだまだ学年主任たちから注意されることが多かった。
だけど、俺たちはぎこちなく説教したり、俺たちと混じってサッカーをめちゃくちゃ楽しそうにする青野が好きだった。
「おれ学年主任に怒られたくないから今日は早く帰りマース」
山根がゆらっと手を上げてそう言うと、青野ははいそこうるさいですよーとめんどくさそうに手を振った。
「ちぇー」
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