序章

6/14
124人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
……だから、クラスの全員が放課後、青野が職員室から戻ってくるのを待っていた。 というか、ホントはみんなバイトや用事なんかなかったんだよな。 ……俺もなかったし。 「遅っせーな、青野。 すぐ戻って来るって言っておきながらよー」 机を寄せてウノをやっていた連中がそうぼやくのが聞こえた。 「ウノもそろそろ飽きたしな」 「帰っちまうか?」 そろそろ言い出すやつがいると思ってた俺は、携帯を閉じると振り返った。 「ばーか、こんな時間まで待ったんだぞ。 もうちょい待とうぜ」 そう言うと、みんな「ま、いいけどさ」と肩をすくめた。 「じゃーもう一戦と行くか」 中村が腕まくりをしながらカードを集める。 「今度は金かけてやろーぜ」 山根が得意そうに言う。 「金欠だっつーの」 「はいはい、来週バイト代入るんだろ。 だぁいじょーぶ、ツケにしてやる」 「あ、こいつ勝った気でいやがる」 「たかが2連勝した位で」 「1勝もしてないお前よりはマシだろ」 「ムッカつく!」 「ぜってー勝つッ!」 「勝てるもんならな~」 山根たちがそう言って鼻息荒く腕まくりをした時、俺の席の近くにいた女子連中が言い出した。 「ねえ、なんか私のケータイ電波悪いんだけど」
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!