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そろそろ太陽は空の中央に上り。時間で言えば丁度昼になるだろう。
気付けばトウラは片手に杖がわりの木の棒を携え。息を大きく乱しながら、自分より五メートルぐらい離れたシーナに『ね、姉ちゃ~ん。そろそろ昼飯にしようよ~!』と、もう何回目になるか解らない愚痴をこぼしていた。
そんなトウラの愚痴を歩きながら聞いていたシーナは、青くすみわたる空を見上げながら返事もせず。ただ黙って聞いていた。…それがさっきまでの状態。
今はシーナは火をおこし。
トウラは木陰でバテていた。
シーナ
「トウラ~ちょっと手伝って~!」
しかし、その声にトウラが返事をする事はなかった。
シーナがちらっとトウラがいる方を覗くと、トウラはスースーと寝息をたてて眠っていた。
フッ、シーナは眠るトウラの頭を優しく撫でながら、大きめのタオルをトウラにかけてあげた。
トウラ
「うぅーん…母ちゃん。」
ビクッ!
タオルをかけるシーナの指がビクリと震えた。
『お母さん…か。』そう呟き、今朝見た夢を思い出していた。
暗い世界に一人泣きじゃくる小さな少女。
それを近くで冷めた眼差しで見つめる自分。
何度同じ夢を見たかすらもう忘れた。
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