二人のモヤモヤ

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内心、かなり驚いた。 同じクラスだって事にも驚いたが、隣の席になるとは思ってもみなかったわけで。 その子は入学式の時にもいた女と喋っていて、俺が席に着いたことには気がついていなかった。 取りあえずいつものポーカーフェイスを保ち、表情がバレないように顔を伏せたんだ。 そして授業中。 あの子は俺の事を覚えていないようだったから、教科書を忘れた振りして見せてもらった。 けど案外隣との距離が近すぎて、授業の内容なんか頭に入ってなんかいなかったんだよな… そして授業も終わり、俺はガラにもなく緊張した体を落ち着かせるために、礼を言うのを忘れてさっさと立ち去ろうとしたんだ。 そしたら 『ねぇ、貸してもらったのにお礼の一つも無いの?借りたならちゃんとお礼を言うのが筋ってもんだと思うけどな』 振り返ってみたら、真っ直ぐに俺の目を見ていた。 初めて、そんな風に俺の事を叱ってくれた。 久しぶりに喋った事がそれだったことに驚いたけど、何か嬉しかったから自然と頬が緩み 『…あぁ、ごめん。ありがとう』 それだけ言って、俺は緩む顔を抑えながら その場を去った。  
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