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「お代はたえさんの身体を貰います」
「なっ…何故だ!?」
私にたえさんの首を取られ、野侍は喚きます。
はっきり言って中身のない貴方に興味はないですね……
「たえさんには沢山の優しさが詰まってますからね…ソレを缶詰にして他のお客様に売るのですよ」
そう言ってまだ、血の滴るたえさんの身体を担ぎました。
切られた首から流れでる血潮で畳は血の池になってますね……
旦那に首を切られた、たえさんは良い具合に悲痛な顔をしてます。
一度に材料が二つとは、ついてます。
この侍が来た時は運がないと思っていましたが、ね。
「待て!私の願いは……」
「叶ったでしょう?故郷、夕焼け、たえさんの砂金。良かったですね」
「たえは置いて行け!」
「そうはいきません。お代は好きな物をと仰ったのは貴方ですからね。その代わりソコの砂金は置いて行きますよ」
「許さん!たえを置いて行けー!!」
まったく侍とは頭の足りない生き物ですね……
この私に二度も切り掛かってくるとは……
「!?」
「そんなモノでは私に傷一つ付けられませんよ」
私に切り掛かったのに刀が私の身体をすり抜けた事に腰を抜かした侍に微笑みながら言いました。
私は常世の者。
または狭間の者。
そんなナマクラで傷など付きません。
腰を抜かした侍の額を指で一突き。
身体と魂を引き離す。
願いの通り魂をあの黄昏の故郷に閉じ込めて差し上げましょう。
脱け殻の身体は私には必要ないので、此処に捨てて置きましょう。
「たえさん。コレで貴方の願いは叶いましたか?」
独り言の様に私は夜の闇に話します。
たえさんは亡くなったとお思いですか?
真実は違いますよ……
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