Three――

4/6
前へ
/98ページ
次へ
醒めない頭でぼんやりと前を向いた。 人々が群れをつくって扉から出ていく。 少し小高い場所にいた人が持ち物をかき集めている。 「起きた?もう授業終わったよ?」 友達の言葉に愕然とした。 自分は僅か一時間に満たない時間でああも長い夢を見ていたのか。 …実際長い夢かと問われると甚だ疑問だったけれど。 「あ、うん…」 それでも、短い睡眠に旅人は現れなかった。 可笑しい話だけれど落胆はした。大いにした。 なので、次の授業で勉強はもちろん、寝ることもしなかった。 ほんやりと、旅人が助けに来るシナリオを考えていた。 (…末期だなぁ…) 精神病院でも行こうかな。夢に囚われて現実がおざなりになっている気がする。 第一あの夢にそんな危機的状況はないし、だからといって旅人はピンチを救うヒーローでもないし、そもそも旅人と自分の関係もわからないし、 末期だと思いながら思考は結局夢のことになる。 帰路の間もうとうとと夢を垣間見た。 それはたわいもない友人の話だったり、 知己でもない人々との宴会騒ぎだったり、 宝くじが中途半端に当たって喜んだり、 でも、短い睡眠に濃い夢ばかり。 夢うつつのほんやりとした頭で家に入り、夢の続きをと言わんばかりにベッドに身を預けた。   飛 ばな  くちゃ   じ ゃ ない と、   私  は 、
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加