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びゅうびゅうと吹きつける風が標高の高さを物語る。下を見れば町が地図のように全てをさらけ出して横たわっている。同じ高さか少し下くらいに幾つもの屋上が惜し気もなく頂点を見せつける。
風は一層激しくなる。
「・・・・・」
無言で地に立つ私には、驚くほどに全てがわかっていた。
不思議エレベーターにマンションの巨大な吹き抜け。
その先に、私は行ってしまったのだ。
同じようにさ迷い込んだ人々の集落がそこにあった。
彼らにはわかっていた。
ここから抜け出せないと。
風は止まずどんどん吹きつけると。
ここは自然と人工の奇妙な牢獄。
風に飛ばされるも良し。
堪えてしがみつくも良し。
下へと避難しようと画策するも良し。
――どちらも、命の保証は、無いけれど。
ここは見事な高層ビルの頂上。
そこへ運ぶ大量の息は曇天の空から。
そこで小規模な集団は堪えていた。
風に女子供は飛ばされ、
それを男が支える。
鉛色の空が黒煙に包まれる。
間に龍が這うような稲光。
風までも黒く濁ったよう。
何となしに、私にはわかっていた。
――危機を救えるのは、私だけ。
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