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・・・・・
緊急、事態だ。
非常事態だ。
いや危険だ危険すぎる。
「だから、こやつはハシタメなんだよ!身の回りの世話は当たり前なんだからさ!」
「じゃあいいじゃないですか、菊さんだけで。」
「!?」
「当たり前に世話をして下さるのなら、菊さんだけで充分ですよ。」
それどころか誰も世話などしなくていい、と旅人は気遣いをたしなめた。
――そうじゃないのだ。
そういう意味の「世話」ではないのだ。
「さて。菊さん、部屋に案内してもらえますか?」
―――――――
「あンの餓鬼っ!」
女将は椅子一つを事もなげに蹴飛ばした。
いつもなら薄汚い婢が蹴飛ばされている。
「どんなシュミしてんだろね、あの人。」
「よりによって菊だなんて。」
あはは、と芸者達は笑い飛ばす。
「…でも、どうすンの?」
「えっ?何がだい?」
「あいつ、こンままじゃあ桜姉さんに殺されちまうよ。」
「桜姉さん、どうすンだい?」
「どっでもいいよ、あんな奴!!」
女将はおまけに一つ椅子を蹴飛ばして、外へ出ていった。
きゃはは、と芸者達が笑う。
「夜、見に行くかい?」
「お前さんスケベだなァ?」
「菊だよ?恰好のネタじゃねぇかい。」
「初々しいったらありゃしないよ!」
「あの人に虐め倒されてンかもよ?」
あははと卑猥な妄想を駆り立てながら、芸者の行進は行く。
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