――After『One』

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現実的な丸いライトに照らされる。 足元で直射日光が肌を焦がす。 ほやっ、とした視界と思考。 …ああ、夢、か。 彼の名前を知りたかった。 それどころか自分も名乗らず目覚めてしまったけれど。 所詮は夢。 しかも二度寝して見た夢。 ようやく起き上がり、冷蔵庫の水を飲み干す。空のペットボトルをころんと転がしたまま、もそもそと服を着替えた。 『また遅刻?』 友達からのメールを放置していたので、昼頃学校に着いた時はかなり気まずかった。案の定、 「ちゃんと朝起きないと!!」 叱られた。 とりあえず明日は早く起きよう。そう思いながら午後の授業に向かう。 季節は秋。木の葉舞い散る派手な道を踏みしめながら、うろこ雲を仰ぐ。果てしなく広い青を見つめていて、何だか違和感を感じた。何となく気分が合わず目線を反らし、美しい自然を離れて嫌味な人工建造物に足を運んだ。 授業中はほぼ寝るのだけれど、旅人の夢は見なかった。というか何の夢も見なかった。暇な授業を潰すかのように落書きなんかしてみる。旅人の絵を書いたけれど、全く似てなかった。実物はもっとカッコ良かった。 …いや、あらぬ妄想かも。 ちょっと自己嫌悪。 ちゃんと思い出してみようとして、 (そういえば…) 夢の世界の空は、不安を示す鉛のような色だったと思い出した。
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