灼ける月と慟哭の眼差し

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昔見たテレビの番組で、身体がくっついたまま生まれ育った兄弟を見た。 何をするにも一緒、会話も筒抜け。 そんな生活を何年もしてるその兄弟に、九条真琴(クジョウマコト)は親近感を覚えた。 真琴は誰かと身体がくっついてる訳ではない。 黒いロングのストレートパーマ。藍を含んだ黒色の瞳。人形のように整った目鼻立ち。 真琴の容姿は人より出来すぎな位の美貌、それ以外は普通の人間だ。 ━でも、似たような物だ。 と思う。 九条真琴には裏の顔がある。 マフィアとかヤクザではなく。 生まれた時からある別人格。九条理(マコト)の事。 そういう意味では、真琴と理はくっついている。それ故の感情だろう、と自己分析してみた。 お互い大変だな。そうテレビに声をかけ、いかにも同情目的に脚色された番組に軽い不快感を覚えたものだ。 別にこの体に不都合はない。むしろ便利に感じる。 さっき裏の顔と言ったが、実際どちらが裏なのかは分からない。 真琴が許可すれば、好きな時に理が出てくるから自分が『表』。そう言ってみただけなのだ。
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