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白鳥美和が東野珪を意識するようになったのは春のうららかな日差しが暖かい四月の終わりの事だった。
漆黒の髪に漆黒の深い瞳。白皙の肌。
孤高の美少女、そんな言葉がぴったりくる容姿をした美和は入学してすぐにミステリー同好会という奇妙な同好会に籍を置いていた。
その日も同好会の汚い教室の指定席で最近、はまりだしたギリシャやローマ神話の分厚い単行本に視線を落としていた。
数少ない同好会の部員がそんな美和を放っているのはいつもの事で、それが彼女には有難い。
まあ、部長や部員たちもこんな奇妙な同好会を作ってしまうぐらいの変人たちではあったから、美和の極端な人嫌いも気にならないというのが現状と言って良かった。
ミステリー同好会の部員は美和を含めて六人。
しかし、美和を除く五人は創立当時からいる三年生でこの同好会も美和以外の新入生が入らなければ今年いっぱいで廃会になるのは目に見えていた。
そんなミステリー同好会の救世主と言っていい存在が現れた。
それが東野珪だった。
ミステリー同好会の部室のドアを叩いた東野は本当にこんな同好会に置いておくには勿体ないぐらいのごく普通の神経の持ち主だった。
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