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部室に一歩踏み入れるなりあまりにも酷い部室の有様に絶句し、驚いたように美和に視線を向けた。
しかし、美和はそんな東野の視線には一切、気付かないふりをした。
どうせすぐに辞めていくに決まっているのが目に見えたからだ。
東野は早速、部長たちに洗礼を受けていた。
厚底メガネの奥にある小さな目で値踏みするように珪を見ていた部長は突然、アメリカで何十年も前に起こった猟奇殺人で有名になったエド・ゲインについて語りだした。
その熱弁たるや誰にも口を挟ませる隙を与えないほどである。
部長はこの学園で一番と言っていいほどの才媛であるにも関わらず、その熱意がほとんど不可思議なものに向けられるといったミステリーオタクの代名詞といっていい人物だった。
他の部員たちも似たり寄ったりのアンバランスな性格の持ち主ばかりで、毎日のように心霊研究やらUFOについて熱く語り合っているような怪しい人間ばかりだ。
そしてそんな同好会の部室も、そんな実情に相応な使わなくなった古い音楽室の準備室の一室で、それこそ「出そう」なぐらいの廃れっプリなのだ。
大概の人間はこの部室に入り、部長の洗礼を受けた後、回れ右して部室を後にする。
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