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その男の顔に美和は見覚えがあった。
部長に見せられたミステリー雑誌で見せられたエド・ゲインの顔だ。
どうやら部長の頭の中ではまだ例の殺人鬼の事が渦巻いているらしい。
つまり、これは美和の能力が健在だということに他ならない。
美和は密かに小さく息をつくと感情を沈ませた。
これが美和の能力だ。
相手の強く考えていることが頭の中に映像、もしくは音声になって聞こえるのだ。
顔見知りの程度の感情を持つようになれば美和にもある程度の制御が可能になるが初対
面の相手には否応なく、働いてしまうその能力はかなり厄介なシロモノだった。
「どうかした?」
美和の向かいに座った東野が心配そうに声をかけてくる。
どうやら落ち込んでいるのが彼にも伝わってしまったようだ。
どうにも調子が狂う。
大体、どうして東野に対してあの能力が働かなかったんだろう?
美和は自分でもその理由が分からないまま、目の前の人物を強く意識した。
見た目は……どこにでもいるごく普通の男の子だ。
中身も然りといった様子で、とくに目立ったところのない感じだ。
ただ一つ美和の目に強く感じられたのは東野のまなざしの強さだ。
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