第一章 星の少女

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 アテナはぶつぶつと独り言を漏らしながら自分の部屋に戻ろうとした。その時、目の前にいきなり女性が顔を出したのでアテナはひっくり返りそうになった。 「アテナ、どうした? いつにも増して、浮かない顔、して」  言葉が途切れ途切れになってしまうドレッドの妹、ラフィアであった。金色の長髪を有する頭を傾けて、アテナの顔を無垢な瞳でじっと覗き込んでいた。 「ビ、ビックリした。ラフィアちゃんか。何でもないわ! いつも通りの浮かない顔……、っていつにも増して!? 私、普段からそんな顔してた?」 「うん、退屈そうな、顔」 「あ、あはは、なんでもないから心配しないで。ほらラフィアちゃん、エリンやヴァイシリオンちゃんと遊んできて」  ラフィアの背を押して行かせるアテナ。ラフィアはぱちくりとまばたきをし、歩いていった。 「ふぅ、黙ってる訳にもいかないか……」  その日のうちにアテナは大臣達を王座の前に集め、手紙の内容を語った。それはあまりにも突然で、驚くべきものだった。 「キルヴェール皇子からよ。直球で言っちゃうと、私と結婚してほしいんだって」  一同が騒然となるのも当然だった。あんぐりと口を開けて戻せない者もいれば、目を見開いて驚いている者もいる。しかしドレッドは何を気にするとも無く言った。 「断ればいいだろう? アテナにその気があるようには見えん」  ドレッドのぶしつけな物言いに大臣が眉を吊り上げる。 「これ、一兵士が陛下に何という口の利き方を────」 「いいのよ、私がそうしてって言ったんだから」  言ってアテナはドレッドにウインクした。 「そりゃ私だって断るつもりだったわよ……。その先を読むまでは」  アテナは暗い表情と暗い声で言った。 「こう書いてあったわ。『この申し出を断った場合、レグナム帝国の全戦力を以って攻撃する』と……」  再び騒然となる広間。これには流石のドレッドも驚いているようだった。しかし当然納得が行くはずも無く、大臣がしどろもどろしながら言った。 「ば、馬鹿なっ! これでは脅迫ですぞ! 大義名分も無いのに、そんな無茶なことがまかり通るとでも!?」 「私だって馬鹿なことだと思うわ。でも、なんだかずっと嫌な予感がするの」
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