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ドレッドが渋い顔を見せながら言う。
「ファレンシアもかなりの大国だ。大義名分も無しにファレンシアを攻撃すれば、嫌でも世界中の国々に目を向けられることになる。そうなればいくら世界最大の軍事国家といえどもタダでは済むまい。本当にそんなことをするとはとても思えんな。しかし、もし本当に攻撃してくるつもりなら……」
「ファレンシアの人々が、世界最大軍事国家の火に、晒されることに、なる」
それまで黙って聞いていたラフィアがぎこちない口調で呟いた。ラフィアの言葉に皆の表情が曇る。
「万が一本当に攻め入ってくるつもりなら、世界中の国すら相手にできるほどの戦力を持った可能性もある」
ドレッドが口をへの字に曲げながら目を閉じた。
「もしかして、神の力を誰かが手に入れたとか」
話を聞いていたエリンが閃いた様子で指を立てる。
「神の力の存在は、黒衆との戦いであいつらの知るところにもなったし、レグナムなら神の力を持った人の一人や二人くらい探し出すのは簡単じゃない?」
「その可能性もあるけど、一人二人の力で本当に何とかなると思ってるのかしら」
「それは無いな。俺達がいることを知っている。そんな無謀なことは出来ないだろう」
ドレッドの言葉を聞いたヴァイシリオンが、ハッとして言った。
「ねぇ、それじゃ変じゃないの? 私達がいるって知ってるんなら、なおさら攻撃なんて考えないの。普通に考えて、レグナムのほうが痛手を食らうハメになるの」
余計に訳が解らなくなってきた。レグナムの狙いが全く掴めなかった。まさか本気でアテナとの結婚を望んでいるのだろうか。レグナムの力が脅しになるとでも思っているのだろうか。
「うーん……。皆、今日はもうやめておきましょう。明日、知恵を借りる人を呼ぶから。もう夜だし、今から呼ぶんじゃ失礼だわ」
大臣が片方の眉毛を上げて尋ねる。
「知恵を借りる? 一体誰のことですかな?」
「私の友達よ」
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