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私は胸が躍った。これを利用しない手は無い。ノアズはその体に重力を宿しているというのだ(恐らくは星と同化するためであろう。そうすることによって隠れているつもりなのだ)。つまり、ノアズがこの星を飛び立つ時、この星の大気を巻き込んでいくはずである。ヴァレリアに出来上がった穴の直径からしてノアズは凄まじく巨大であるから、相当な量の大気を巻き込む。加えて我が力で定期的に酸素や食糧を創り出せば、人間の十人程度を乗せても、百年や二百年など容易にセルムの中を進み続けることができる。ノアズは呼吸をしないということも幸いであった。
あれほど多くの問題が、たった二つになった。一つは、ノアズにどうやって辿り着くか。ヴァレリア円形大瀑布の中心に行くならば、やはり飛行機は必要である。しかしこの問題はすぐに解決できそうであった。なぜならこの本には何と、飛空型特別戦闘艇、即ち『飛空艇』なるものが載っていたからである。古代文明の代物だが、外形と仕組みさえ解ればどんな物でも我が力で創造できる。仕組みを理解するのに時間がかかりそうだが、気にするほどでもない。瀑布の中心まで行き、ノアズの体内に潜めば完璧だ(ノアズには消化機能等も無いため)。
二つ目の問題こそが、最大にして最難関。ノアズをどうやって目覚めさせるかである。簡単に言うなら、星を殺せばいい。無論、無茶苦茶を言っている。もう少し言うなら、この星の星命力が吸い取れなくなるまで減ればいい。即ち、この星に存在する星命(≒生命)を極限まで減らすこと、全生命の抹殺だ。
私一人の力ではどうすることもできない。いくら神の力を持った私と言えど、全世界の生命を相手にすることはできない。駒が必要だ。世界に対抗できるほどの戦力を持った駒が。
その時の私は、どんなことでもできる気がしていた。ようやく見つけた新世界への道、その嬉しさから、神にでもなった気分だった。だから、できると思った。生命すら、創造できると思った。我が野望を叶えることができるほど強大な力を持つ生命を創造するのだ。
そして、それは生まれてしまった。
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