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序章 Destroyer's Indication
全ての元凶はあいつだ。あいつさえいなければ、僕が歪むことは無かった。あいつさえいなければ、僕は星を破壊せずに済んだ。でも、今となってはどうでもいい。僕は破壊するだけ。楽しいから破壊するだけ。そのために、そのためだけに。
そう言えば、ここに来るのは初めてかな。
「ちゃんと仕舞ってあるね」
「ねぇ……を使っ……面白い……?」
「確かに静かにしてなさいって言ったけど、そんなに声を小さくしなくていいよ」
輝きを失った様子は微塵も無い。相変わらず美しすぎる光を放つそれは、僕の掌すら透けさせる。これさえ手に入ればここにいる理由も無い。もっと複雑に隠してあると思ったんだけど、彼女らしい、正直な場所だ。
「帰るよ」
僕の前の空間がよじれる。
真っ白な空間を通って到着した場所は、何とも豪華な広間。そこには一人の男が立っていた。僕はその男に近づき、適当な話題をふった。
「皇帝のご様子は?」
「相変わらず励んでおられる。あの歳であれだけ元気でいられるとは、私もその秘訣を教わりたいものですな」
「はは、全くだね……。で、これなんだけど」
「素晴らしい。終に生まれるのですね、究極の存在が」
男は普段なら滅多に見せない興奮をあらわにしていた。僕の掌の上を充分に眺めた後、僕の顔を見て不敵な笑みを浮かべる。
「では、私も?」
「ああ、今の君なら容易なことだ。激動を世界にもたらそうじゃないか」
男は歩いていった。僕はその姿が見えなくなるまでしつこく背中を見続けていた。やがて姿が消えると、僕もまた歩き出した。
「フフ、激動するのは世界だけではないんだよ。きっと彼らも……。どうやって迎えてあげようかなぁ」
僕は誰もいない廊下を闊歩しながら独り言を呟いていた。誰かが通れば不審者として人を呼ばれる自信がある。だがそんなことは問題ではない。これから起こることを考えただけでゾクゾクし、自然と顔がにやける。これほどに楽しい気分は久しぶりだ。
「楽しいなぁ、楽しいなぁ」
ほら、破壊者の胎動が聞こえるよ。
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