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――ハァ、ハァ、ハァ、ハァ
一人の少女が旅人が着るには少しばかり上等なマントを羽織り夕暮れの町を疾走する。
まるで何かから逃げるようにただひたすら人混みの中を駆ける。
これはジョエル達が城門を通る少し前の話し
‡‡‡
ジョエルはレノたちと別れた後裏路地を縫うように歩き、たどり着いたのは頑丈そうな門。
そこには“ドリス中央墓地”と、書いてあった
「ここに来るのも二年ぶりか」
ジョエルは感慨深気に呟く。
門をくぐりゆっくりと墓地を歩き一番奥でひっそりと佇む墓石の前に立つ
「ただいま、父上、母上」
そう、その墓石にはこう彫ってある
“ジャック、ノエル・シルヴァーグ夫妻、此処に眠る”
そう彫ってあった
「花くらい持ってこれれば良かったんだけど今日はどこも店を閉めてしまっていたんだ、勘弁してくれるよね?」
ざらついた墓石を撫でながら言葉を紡ぐジョエルの表情は深く被ったフードの表情はせいで窺い知ることは叶わない。
そうして、どれくらいそうして居たのだろう夕日は沈みかけ、辺りは朱に染まっている
「ジョエル様」
ジョエルはその声に我に返ったように顔を上げた
「オルドか、三年ぶりか?」
オルドと呼ばれた白髪の老人は優しく微笑みながら言った
「ええ、ジョエル様がこの街を出て以来になりますのでそれ位になります」
オルドは至極穏やかに答える
「レノ様や他の方々もお元気でいらっしゃいますか?」
オルドの問い掛けにジョエルは愉快そうに笑いながら答える
「誰一人欠けることなく元気だよ。
今日は屋敷に泊まっている、会いに行けたら会ってあげてくれないか?
その方がみんなも喜ぶ」
「老いぼれには嬉しい言葉ですな」
オルドは嬉しそうに笑った。
それにつられるようにジョエルも笑った
「それでは早速彼らの顔を見に行きますか」
「俺は百合の塔によってから行く、先に行っていてくれ」
お気を付けて、とオルドは言うと墓地のその場から去っていった
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