第1章 浮気性の彼氏

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私は、彼氏の浮気に気付いても、怒る神経が麻痺してしまっていた。 待ち合わせ場所。 待ち合わせ時間。 約束の映画のチケット。 二人で計画したデートはずなのに、彼氏は一向に来る気配すらない。 チッ。 無意識に、舌打ちした。私はハンドバッグから携帯電話を取り出して、片手で操作して彼氏に電話をした。 でも、虚しくコールだけが、耳元で響いている。 …3回。 4回。 …10回目のコールがやっと切れて、通話が始まった。 私は溜め息をついて話し始めようとするが、いきなり、 「あんた、ケイゴのなに?」 と冷たく尖った口調の女の声が聞こえて来た。私は驚きながら、きつく目を閉じて通話終了のボタンをタップして、何処かの飲料会社の自販機の脇にある缶専用のごみ箱に、携帯を投げ捨てた。 ガランッ。 とか、 ガツンとか、へんな缶の擦れる音が、一瞬だけ聞こえて、私はくるりと背を向けて駆け出した。 私、如月(きさらぎ)美月(みづき)。24歳。横浜のデパートで、アクセサリーなどを販売している雑貨部に所属している。短大を出て就職したから、場所の異動もなく雑貨部で4年目。後輩もどんどん入って来て、仕事もすっかり手慣れてきたもんだ。でも、私は後輩たちには好かれてはいないだろう。 理由は、自分でも分かっている。 私は、短気でかなり気分屋だ。だから機嫌が悪い時、つい周りの人に当たってしまう。自分でも良くないと分かっているのに、機嫌が悪いのは、直せない。
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