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「理由は、それだけか?」
渓伍が尋ねると、私は顔を上げて渓伍を見た。
「亜弥さんとの浮気、前から知ってたの。それだけじゃない。他にもいろんな女の子、部屋に連れ込んでた。私、何度も見たの。いつの間にか、妬きもちもしなくなって、怒る気力もないんだ。ねえ、渓伍。それって、恋愛じゃないよね?」
「…それは、俺を信じてるってことだよ」
「違うよ。これは…恋愛じゃない。私は、渓伍のことを愛してない。恋愛じゃないのよ」
「嘘だ!」
突然、渓伍は私を抱きしめた。だが、私はきつく目を閉じて頭を横に振った。
「お前が不倫なんてしてるから、そんなこと考えるんだよ!」
「渓伍…!?」
「俺にはお前だけなんだよ、美月!」
優しく強く、渓伍がそう言うと、とうとう私の瞳に涙が溢れて来た。
「そんなの、もう信じられないよ。渓伍。今はあなたを愛していないの。愛せないのよ。ごめんなさい……!」
私はそう言って渓伍の胸から離れると、売場を飛び出していった。
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