第3章 不倫の境界線

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渓伍は舌打ちして、思わず床に置いていたカラの段ボールを蹴飛ばすと、そこに明璃がやってきて、 「渓伍さん?」 と首を傾げると、渓伍はハッとして振り向いて明璃を見て、 「あ……明璃ちゃん、ごめん。お疲れ様」 と小さく言って、売場を出ていった。明璃は驚いていたが、なんだか胸騒ぎがして段ボールを拾った。 美月と話してたのかな。なんこ、渓伍さん、様子が変だった。 * 愛していない。 はっきりと分かると、なんだか涙が出る。最初から愛がなかったわけじゃない。愛してた。今は、これが愛じゃないなら、なんなんだろう。秋生も渓伍も、富沢さんとのことを不倫だなんて言う。でも、そんな言葉でけなさないで。言葉は、何よりも鋭い刃を持って、心をえぐってしまう。 気付いたら、私はサンセットの前にいた。 雨が降り出して、心も体も濡らしていく。 喬さん…………。 助けて……。 私はドアに腕を伸ばすけれど、開ける勇気が出なくてふうっとため息をついた。諦めて店に背を向けると、 「美月ちゃん?」 と声がして、私は顔を上げた。目の前に、傘をさしている喬さんがいた。驚いて私を見ている。喬さんは私に歩み寄ると、 「どうしたの?こんなに濡れて」 と優しく言いながら歩み寄ってくると、私は涙が溢れてきて頭を横に振った。
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