第3章 不倫の境界線

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「ねぇ、喬さん。私…渓伍と別れた。愛じゃないって気付いたらから……。ううん、違う。もう、愛がなくなったって気付いたの。でも、私はほんとは、ズルいんだよ。勝手な女なんだよ…!」 私はそう言いながら涙が止まらない。すると、喬さんは傘を放ってそんな私を抱きしめてくれると、 「ズルくない。美月ちゃんは、いつだって正直者だよ。美月ちゃんはかわいいし、魅力的で、わがままなトコも全部、俺は好きだよ」 と優しく言うと、私は泣きながら少し笑った。 「褒めすぎだよ」 私はそう言って、喬さんの胸に頬をうずめると、喬さんは私の肩を掴んで離し、私たちは見つめ合った。雨に濡れた喬さんの垂れた前髪が、色っぽい。見惚れちゃう。泣きながら、そんなことを考えている自分がなんだかおかしい。 そして。 静かに、唇が重なった。 信じられない。 でも、それは、今一番求めていたことかもしれない。 喬さんと、キスをすることを………。
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