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受話器の向こうから聞こえる声は弱々しくこう私に告げたのです。
「Mさん…俺今ヘッドで岐阜に向かってます…」どうしたのかと訊ねたら「弟…死んじゃった…」
一番聞きたくなかった 最悪の事態です。
彼の弟もトレーラーのトラック野郎でした。
仲の良い兄弟でアパートに二人で住んでいたのです。
K君の弟はトレーラーに乗り始めて一年位のビギナーで 兄と同じトレーラーに乗れた事を凄く喜んでました。
弟の仕事は東京から大阪までの往復。
普段は週3~4往復の高速も使える比較的時間に余裕のある仕事だったのですが、年末も近づいたその月は忙しく
5往復を走らなければいけないハードスケジュール!!
そしてそのハードスケジュールをこなし始めて一週間後に悲劇が起こったのです。
夕方帰宅したK君の弟は食事と入浴を済ませた後、休む間もなく仕事に出掛けたのです。
K君が「お前寝なくて大丈夫なのか?少し寝て行けよ!」そう声をかけたそうです。
しかし弟は「大丈夫!時間ないから走るよ!俺は若いんだから。」そう笑いながら出掛けたそうです。
そしてその言葉が弟の最後の言葉になってしまったのです。
その笑顔も自慢した若い命も もう帰ってこないのです…。
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