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『運命    アタシはソレを信じてなかった    あるのはゲンジツだけ    赤い糸とか    王子様とか    そんなのはいない    いつだってあるのはゲンジツ    少女漫画みたいな出来事はユメでしかない    レンアイは    傷付けあったり    汚し合ったり    壊れていったり    そんなコトばかり    悲しみばかり生んでいく    だから、アタシはレンアイを恐れていたのかもしれない    自分を守っていたのかもしれない    怖くて    恐くて    前に一歩踏み出せなかったのかもしれない    でも──    アタシは出会った    運命のオトコ、キョウと    アタシはキョウを知った    出会った瞬間には何も感じなかったケド    ホテルでキョウに抱きしめられたトキ    アタシはイマまで知らなかった    感情に包まれていた……    アァ……』 「一位―っ! やったぁーっ! アタシはついにやっちゃったよー!」  アタシは空……じゃなくて天井に向かって叫びつつ、自分の席でボーっとしている晴海に駆け寄る。今日の朝のランキング更新でアタシの作品『ひとつのシンジツの愛』が『天使の本棚』で一位になった。  『はぴすと』は一気にランキングから落ちていっちゃった。  もう、その結果を知った瞬間に大声を出して体をジタバタさせて喜んだのに、自分で喜んだりしただけじゃぁ、それだけじゃあ足りないよ! 晴海にこの感動と嬉しさを伝えたいじゃん? 嫌味かもしれないけど、ケータイ小説のことは晴海にしか話してないし、ずっと晴海にばかり聞いてもらってたし、親友だし、とにかく話したかった! 「……ん」 「聞いてよ晴海~」  晴海はいつもよりさらに細まった目で、視線をアタシに向けてくる。相変わらず晴海のテンションは低いままだけど、それでも構わないじゃん。  この気持ちの高ぶりは誰にもおさえられないし! おさえられたくもないし! 一位になることはアタシが仕組んだことだけど、一位になるために毎日パソコンで投票し続けたり、一位の『はぴすと』を潰したり、そういうことをやってきたけど、一位になったという快感はけっこう大きい。ついにここまで来たじゃん! って感じで。
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