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「ついに、あと一か月待つだけじゃん! それだけで百万円! 書籍化! えぇっとそれからそれから~」  もっと色々とこれからのことを喋ろうとした時、晴海が何も言わずにすっ、とある方向に指を向けた。アタシは疑問符を浮かべて、晴海が指を向ける方法に顔を向けると、 「あ」  一人の男が廊下から教室に半分体を乗り出してアタシを手招いている。  晋也だ。 サッカー部の……昔、好き『だった』男。付き合ってもいた、もうだいぶ前に別れたけど。 アタシは一瞬迷ってから、ゆっくりとした足取りで晋也に近付く。どうして晋也がアタシを呼ぶのか分からないけど、無視できるような感じじゃないし、仕方ないし。でも、変じゃん。何で晋也が? ちょっとウザい。 「なに?」  ウザいけど、教室まで来られたら相手しないわけにはいかないじゃん。アタシからすれば話すことなんて全くないし。アタシと晋也はケンカ別れだし、正直今でも晋也は許してない。これからも許す気なんて全くないから。  すると、晋也はいきなり、 「美奈ってさ、新しい彼氏いないよな?」 「ハァ?」  晋也はとても親しげに話してくる。それがウザいってのに、晋也はなに考えてるんだろう。新しい彼女ができて、アタシのことを無視し続けたし、アタシだって晋也を無視し続けた。なんかもう何もかも嫌いになったし。 「ってか、いないってことはもう聞いてんだよ。それで、俺も今フリーなんだよね。だから、もう一度ヨリ戻さね?」 「フリーって……、なにそれ? 新しい彼女いたじゃん?」  見せ付けるように手をつないで一緒に帰ってたりしてたじゃん。アタシの知らない子だったし、興味もなかったし、詳しくは知らないけど。そんな嫌いになった元カレのことなんか知らなくてもいいし。 「別れた。だから、もう一度付き合おうぜ?」 「嫌」  即行で断る。晋也はケンカしたことを覚えてないかのような素振り。ケンカして、別れて、はいおしまいってわけないじゃん。アタシたちの彼氏彼女の関係が壊れたじゃなくて、アタシと晋也との関係は全てブッツンと切れたようなものだし。
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