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そこで、頭の中で何かが引っ掛かった。
何かと何かが被る錯覚。違う、錯覚じゃないって。ウンメイとか……ウンメイって。まるで……。
まるで、アタシの書いてるケータイ小説と全く同じことが起こってるみたいじゃん。
そう考えてしまうと、一気に色々と考えちゃう。アタシをナンパした今隣で寝ている人は、ビックリしたことに、仕事がホストだった。
だから、イケてるんだぁ、と納得したけど。しかも、名前は「翔」。ショウとキョウ、すごくそっくりだし。ありえない、ありえないとは思うけど。
……でも、何もかも、ケータイ小説と同じじゃん。マジそっくりになってるじゃん。
実話って嘘つきまくってたけど……本当のことになってしまいそう。
でも、さすがに、偶然の偶然に決まってるし! と強くアタシに言い聞かせた。
だって、ありえるわけじゃないじゃん、そんなこと。どう考えたって、偶然じゃなかったら何? って感じだし。
そう、思った──でも。
「え?」
アタシは焦った。ありえないくらい焦った。背中に氷の塊を突っ込まれたような感覚。
アタシはケータイ小説『ひとつのシンジツの愛』をもう『付き合っているホストとは別のホストに襲われる』というシーンの前まで更新しておいた。予定だと、あと十日で完結させるからいい感じじゃん? と思ってた。
完結させないと書籍化できないし。それで、今内容を確認しようとして編集のボタンを押して著者確 認のパスワードを入力するんだけど……
二 四 三 七。
アタシの名前は藤垣美奈。だからフジミナ。覚えやすいパスワードがいいじゃん? だから、アタシはパスワード系を全部このフジミナにしてる。楽だし。
でも、パスワードを入力してOKボタンをもう一度、押す。でも、
『パスワードが違います』
画面に表示されるのはその一文。おかしいって。打ち間違えてないじゃん! アタシのパスワードは全部フジミナなんだから! 今までずっとこのフジミナで編集のページに飛べたのに、今は飛べない。ありえないし、マジおかしいって! そんなことがあるわけないし! 何かの間違いだし!
アタシは二四三七を入力し続ける、何度も何度も何度も何度も。でも、何も変わらない。
『パスワードが違います』
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