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「お金ってすぐなくなるじゃん? ケータイ代とか、ぱーっと遊んだりとかすればすぐゼロになるじゃん? 親の仕送りもバイトの給料も全部月末にはなくなるし、全然足りないってば。 ってゆーかさぁ、お金なんてあった方がいいに決まってんじゃん。でも私はウリとかはしたくないし、このケータイ小説ならすっごく楽じゃない? 人気者になれるし、お金だって手に入る。これチャンスって思わない?」  百万円はすごく大きい。遊び放題だし、今まで買えなかった服だって買えるし、女子高生作家――って雑誌に取り上げられれば一躍人気者。そうすれば、ちょっといい彼氏だって見つかるかもしれない。  そうなったら、輝かしい生活が私を待っている。少し想像しただけで歓楽な気持ちで満たされる。 「チャンス、ね。美奈にとってはそうなのね。まぁ、いいわ、美奈がそう思うなら好きにすればいい。取らぬ狸の、といった諺にならないように気をつけるといいわ。  それで、話の内容はどうするの? 実話系の話ってのは分かったけどさ、美奈って物語にできるような体験ってあったけ? 三ヶ月前に付き合っていたサッカー部の男のこととか?」  思い出したかのように指を立てて、私に問いかけてくるけれど、私はそれを鼻で笑い、 「晴海~、体験とか嘘に決まってんじゃん。それっぽく書けばばれないって。ただ実話とか書けば人気が上がるでしょ?」  そう言うと、晴海は黙ってしまった。私はケータイ小説を書く前に、それなりに下調べをしておいた。闇雲にケータイ小説を書いたって、そう簡単に出版までいかないことくらい私だって分かってる。人気になる作品の要素を真似していけば、それだけで人気が出るはず。
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