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「ここらへんで幸せオーラいっぱい出しておいて、そういうのを続けておいて、これで中盤は終わり。それで、最後はある日ホストの彼氏の家にいたら別のホストがたまたま一緒にいて、それなりに喋ってたらけっこうそのホストもいい感じで、そういう状況になったらその別のホストも少しいいかもとか思っちゃうわけで しょ?」 「ふぅん」  ずっと一人の男しか出てこないのはリアルじゃない、いろんな男が出てこないとつまらない。パフェだって好きなフルーツでも、それだけしか乗ってなかったら絶対愚痴るし。 「それでそのままいい雰囲気になってそのホストに押し倒されるわけ。彼氏がいるからとか抵抗しても、そのまま無理矢理ヤられちゃうわけ。それで、ちょっとそのホストがいいと思ってしまったことを後悔しながら、やっぱりホストの彼氏のことがやっばいくらい好きだってことを知るわけ。これが愛、みたいな感じ?  その彼氏を想う大きな気持ち、これが愛! とかにすればいいかもね」 「へぇ」  自分の本当の気持ちに気付くシーンってのは盛り上がる部分だと思う。ここで、それっぽいことを書けば読者が嘘の実話でも勝手に共感してくれるだろうし、このシーンは力を入れていこう。 「でもこのままハッピーエンドだと駄目じゃん? 最後には彼氏と無理矢理シてきたホストにドラッグ打たれちゃうわけ。ヤバ目のドラッグをね。それで、そういうことをしたホストの彼氏に絶望して、心も体もボロボロになったところで私が交通事故で死んで、おしまいっ!」  最後にダン! と机を叩いて、私は息を思い切り吐き出した後に口を閉じた。すごい喋ったような気がして、少し喉が渇いた。でも、授業中に考えたストーリーはもう完全に頭の中に入っているようで、良かった。 「……正直に言わせてもらうと、すごく暗いし、そんな救われない破滅的なストーリーで大丈夫?という風に思う。ケータイ小説だって、そんな甘いものじゃないんじゃないはず。すごい数の人間が書いているのだから、いかにもそれっぽい話を書いただけだと、難しいんじゃない? それに、私だったらそんな体験が実話とか言われたら、普通におかしいって疑うけど。いくらなんでもこんなことってありえないから」
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